法改正事項

国家公務員の「地域手当」は法律に拠るべき

すぎなみ耕援事務所

地域手当、そのあり方を変えることは不可避

「転勤で地域手当減額は違憲」津地裁裁判官が国提訴―名古屋地裁
時事通信2024年07月02日18時33分(中略)
 転勤先の勤務地によって地域手当の支給額が変動し、裁判官の給与が減るのは憲法違反だとして、津地裁の判事(61)が2日、国に減額分約240万円の支給を求めて名古屋地裁に提訴した。判事は大阪や名古屋両高裁勤務を経て、2021年に津地裁に赴任。人事院規則では、国家公務員の地域手当は勤務地で異なるが、過去3年間で計約240万円が減額された。「報酬は在任中、減額することができない」と定めた憲法80条第2項に違反するなどと主張している。

https://www.jiji.com/jc/article?k=2024070200963&g=soc

この裁判はなるようになる、あまり関心もないですが、問題はその決め方にあります。

憲法第80条

第1項 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によつて、内閣でこれを任命する。その裁判官は、任期を十年とし、再任されることができる。但し、法律の定める年齢に達した時には退官する。
第2項 下級裁判所の裁判官は、すべて定期に相当額の報酬を受ける。この報酬は、在任中、これを減額することができない。

平成18年

もとは調整手当といい、公務員の給与を補完する物価等調整の位置づけでしたが、給与制度改革により、これを基本給との配分変更によって性格は明確となり、地域手当と改称もされましたが、人事院で独自に決める規則により規定される位置づけを変えないことは、最も問題でした。

起きたこと

国家公務員は基本給の0~18%でした。東京都職員の地域手当は、人事院規則の規定と矛盾しますが、島しょ等地域以外一律18%でした。特別区18%と異なる多摩地域の人事異動は普通で実質増減は望ましくなく、基本給との配分変更であって一律なくしては多数訴訟を抱えたでしょう。人事委員会の承認を得て東京都規則で定めますが、総務省の技術的助言という指導は健在です。

平成27年

地域手当は「給与制度の総合的見直し」として再変更、それまでの特別区18%→20%、大阪市・武蔵野市15%→16%、調布市12%→16%、名古屋市12%→15%、津市0%・三鷹市10%のままです。

多摩地域の自治体

典型的なのは三鷹市です。人事院規則で10%と規定されますが根拠は薄く、市職員15%に改め、市長は人事院総裁に要望しました。https://www.city.mitaka.lg.jp/c_service/047/047523.html東京都は指導しますが、自ら異なる地域手当を規定するため、三鷹市の主張は仕方ないです。なお他県職員では、差を小さくしたり、一律にしたりなど枚挙に暇がなく、実質も失っています。

今後

今年の人事院勧告では地域手当に係る言及があるとみられ、都道府県単位などの広域化も見込まれます。その決め方も、国家公務員は人事院規則でなく、法律に規定する必要があるでしょう。

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代表 社会保険労務士・行政書士
杉並区阿佐谷パールセンター商店街が事務所の社会保険労務士・行政書士です。東京都庁25年勤務、人事給与・健保険者の幅広経験を有します。経営改革・IT推進の事業実績も携え、BCP(事業継続計画)含む課題解決に尽力します。
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