雇用保険法、育児・介護休業法の改正法が公布
New 「2025年育介法大改正の準備は今!」始めました(2024.10.18)→育介休モデル規程は既にあり、就業規則等改正準備にすぐ着手できます。
あまりいい話は聞こえない、昨今の国会でありますが、重要な改正法案が2つ成立しています。一つは雇用保険法改正(R5.5.10成立)、もう一つは育児・介護休業法改正(R5.5.24成立)です。別々の法案に見えて育介給付は雇用保険財源のため雇用保険制度の一大改正ともいえます。
雇用保険法改正
「多様な働き方を効果的に支える雇用のセーフティネットの構築、「人への投資」の強化等のため、雇用保険の対象拡大、教育訓練やリ・スキリング支援の充実、育児休業給付に係る安定的な財政運営の確保等の措置を講ずる。」が改正の趣旨であり、最も遅い施行は4年後となります。
改正の概要
1 雇用保険の適用拡大【雇用保険法、求職者支援法】
雇用保険の被保険者の要件のうち、週所定労働時間を「20時間以上」から「10時間以上」に変更し、適用対象が拡大されます。これに伴い、雇用保険の被保険者及び受給資格者は、求職者支援制度の支援対象となります。(令和10年10月1日施行)
2 教育訓練やリ・スキリング支援の充実【雇用保険法、特別会計法】
(1)自己都合で退職した者が、雇用の安定・就職の促進に必要な職業に関する教育訓練等を自ら受けた場合には、給付制限をせず、雇用保険の基本手当を受給できるようになります。自己都合で退職した者については、給付制限期間は原則2か月であるところ、1か月に短縮されます。(令和7年4月1日施行)
(2)教育訓練給付金について、訓練効果を高めるためのインセンティブ強化のため、雇用保険から支給される給付率が受講費用の最大70%から80%に引き上げられます。教育訓練受講による賃金増加や資格取得等を要件とした追加給付(10%)が新たに創設されることとなるためです。(令和6年10月1日施行)
(3)自発的な能力開発のため、被保険者が在職中に教育訓練のための休暇を取得した場合に、その期間中の生活を支えるため、基本手当に相当する新たな給付金が創設されます。(令和7年10月1日施行)
3 育児休業給付に係る安定的財政運営確保【雇用保険法、労働保険徴収法】
(1)育児休業給付の国庫負担引下げの暫定措置が廃止され、本来の給付費の1/8となります。(令和6年5月17日施行)
(2)育児休業給付の保険料率を引き上げつつ(0.4%→0.5%) 、保険財政の状況に応じて引き下げ(0.5%→0.4%)られるようにします。ただし、当面の保険料率は現行の0.4%に据え置きつつ、今後の保険財政の悪化に備えて、実際の料率は保険財政の状況に応じて弾力的に調整します。(令和7年4月1日施行)
4 その他雇用保険制度の見直し【雇用保険法】
教育訓練支援給付金の給付率の引下げ(基本手当の80%→60%)及びその暫定措置の令和8年度末までの継続、介護休業給付に係る国庫負担引下げ等の暫定措置の令和8年度末までの継続、就業促進手当の所要の見直し等が実施され、就業促進手当のうち就業手当は廃止されます。(介護休業給付に係る暫定措置の継続以外は、令和7年4月1日施行)
育児・介護休業法改正
以前掲載した「仕事と育児・介護の両立支援対策の充実について(労政審建議)」の内容です。「男女ともに仕事と育児・介護を両立できるようにするため、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充、育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大や次世代育成支援対策の推進・強化、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等の措置を講ずる。」
が改正の趣旨であり、次世代育成支援対策推進法が本日施行、最も遅い施行でも令和7年10月1日と見込まれ(下記の■1(1)(5))、その他は令和7年4月1日施行となっています。
改正の概要
1 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置拡充【育児・介護休業法】
(1)3歳以上の小学校就学前の子を養育する労働者に関し、事業主が職場のニーズを把握した上で、柔軟な働き方を実現するための措置※を講じ、労働者が選択して利用できるようにすること、当該措置の個別の周知・意向確認を義務付けます(※始業時刻等変更、テレワーク、短時間勤務、新たな休暇の付与、その他働きながら子を養育しやすくするための措置から2つ選択)。
(2)所定外労働の制限(残業免除)の対象となる労働者の範囲が、小学校就学前の子(現行は3歳になるまでの子)を養育する労働者に拡大されます。
(3)子の看護等(感染症等学級閉鎖等含む)休暇を子の行事参加等の場合も取得可能とし、対象となる子の範囲を小学校3年生(現行は小学校就学前)まで拡大され、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みは廃止されます。
(4)3歳になるまでの子を養育する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークが追加されます。
(5)妊娠・出産の申出時や子が3歳になる前に、労働者の仕事と育児の両立に関する個別の意向の聴取・配慮を事業主に義務付けます。
2 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化 【育児・介護休業法、次世代育成支援対策推進法】
(1)育児休業の取得状況の公表義務の対象を、常時雇用する労働者数が300人超(現行1,000人超)の事業主に拡大されます。
(2)次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画策定時に、育児休業の取得状況等に係る状況把握・数値目標の設定を事業主に義務付けます。
(3)次世代育成支援対策推進法の有効期限(現行は令和7年3月31日まで)を令和17年3月31日まで、10年間延長されます。
3 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等【育児・介護休業法】
(1)労働者が家族の介護に直面した旨を申し出た時に、両立支援制度等について個別の周知・意向確認を行うことを事業主に義務付けます。
(2)労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供や、雇用環境の整備(労働者への研修等)を事業主に義務付けます。
(3)介護休暇について、勤続6月未満の労働者を労使協定に基づき除外する仕組みは廃止されます。
(4)家族を介護する労働者に関し事業主が講ずる措置(努力義務)の内容に、テレワークが追加されます。
感想
準備は大変、周知も必要で、労働移動を制度上後押しします。公務員は雇用保険料を納めないが適用もごく一部でリスキリングできず、労働移動も不可能なガラパゴス化が益々深刻化します。他方、いわゆる「子持ち様」などの問題が顕在化しています。あるセミナーを聴きながら、休業取得者への配慮のみ進めて、支援する社員を見過ごせば、従業員間の分断を招くと感じました。来年度から自己都合退職1月で雇用保険が出るため、労働移動を後押しすることにも注目です。